メルちゃんで愛育

ママくらぶボイス 〜パパ編〜

第3回 安藤哲也さん 子供は親を映す鏡。親が人生を楽しんで笑顔で生きよう。
今回は育児を楽しむパパの登場です。父親の育児を支援するNPO法人ファザーリング・ジャパンの代表理事安藤哲也さんに「パパの子育て」についてお聞きしました。

「絵本でコミュニケーションしよう!」百冊の絵本を用意して娘が生まれてくるのを待った。

 妻が最初の子どもを授かって七カ月ごろ、お腹の子が女の子だと分かりました。僕は男兄弟の中で育ったせいか、「小さい女の子と自分がどう接していけばいいのだろう」と少しとまどいました。育児書を読んでも理想ばかりでピンとこないし・・・。
 当時の僕は本屋を経営していて、身近に絵本がありました。「よし、絵本を使ってコミュニケーションをしよう!」。そう思いついて、すぐに百冊もの絵本を買ったのです。それを娘の部屋にどんと置いて「早く生まれてこないかな」と誕生を楽しみに待ちました。それまでの僕にとって絵本は本屋の「商品」でしたが、子どもが生まれてからはまったく違う世界を見せてくれました。

 最初に読んであげたのは、おすわりを始める生後六カ月のとき。ちょこんと座ることができたその日、目の前に絵本を置いたら、自分の手でページをめくったんです。「この子は人間になった!」と思いましたね。動物はしない行為ですから。本をめくることが、これから彼女の世界を広げていくのだろうなと思いました。

七歳になるまで毎晩二冊ずつ延べ六〇〇〇冊を読んだ娘との大切な絵本タイム。

 赤ちゃん時代から七歳までの間に、毎晩二冊ずつ、延べ六〇〇〇冊を読みました。出張の日は「パパの絵本がないと眠れない」というので、朗読テープを残して出かけたものです。
 絵本の読み聞かせの楽しみは、子どもの成長がわかることです。同じ本を読んでいても、反応や目の付けどころが変わってくる。こんなに素晴らしいことを母親だけに独占させてはもったいない(笑)。日本では絵本を読んであげるのはもっぱら母親のようですが、欧米では父親の役割なんですよ。
 そのうち、絵本は子どもだけのものではないことに気が付きました。大人の心に響くメッセージが描かれている。僕自身の仕事の悩みを解決してくれるヒントもありましたし、人生の羅針盤になるような絵本にも出会えました。
さらに、絵本の読み聞かせボランティアを始め、絵本を通して世界が広がり、自分の子ども以外のたくさんの子どもと触れ合うきっかけを作ってくれたのです。

パパ育児を楽しむために自分の得意なことを子どもとの共通ツールに

 本が好きな方には絵本の読み聞かせはお勧めですが、本をまったく読まない人が無理しなくてもいい。スポーツやアウトドアが好きな人は、それを子どもとの共通のツールにしたらいいんです。自分が得意なことを子どもと一緒に楽しむことが大切。
 それに、絵本タイムは楽しいけれど、それだけだったらママに「いいとこどり」と言われてしまう(笑)。子育ては食事やお風呂、送り迎えなど日常のさまざまなことがあります。その両方があって子どもとの信頼が育まれるのではないでしょうか。
 「週末だけで娘のハートをつかめることを教えてください」なんて言われたこともありますが、そんなものはないんです。土日に遊園地に連れていくだけでなく、ほんの少し早起きして、子どもとの時間を作るとか、毎日の積み重ねで出来ることを見つけてくれたらいいなと思います。

親の人生が充実していると、自然と子どもも明るい子に育つ。

 娘にとって父親というのは、いずれ思春期を迎えるころには、一時的に煙たい存在になるものです。大事なことは母親にばかり相談するし、父親にとって複雑な時期もあるでしょう。それでも、小さい頃にしっかり子どもと向き合った時間があれば、大人になった時、またいい関係になっていくんじゃないかと思います。

 僕にとっては、絵本タイムという濃密なひとときがあって本当に良かったと思います。あの楽しい時間は、僕と娘の心のハードディスクに入っている。二人の共通のメモリーですから、いつでも引き出せるんです。そんな時間を作れないまま、思春期に門限を破ったと叱っても、その心配は届かないかもしれない。

子どもは親を映す鏡。親が自分自身の人生を楽しんで自然な笑顔で生きることが大切。

 心理学に「ベーシックトラスト」という言葉がありますが、まずは乳幼児期にしっかりと子どもと向き合い、基本的な信頼関係を作っていれば、その成長過程でいろんなことがあっても、きっと乗り越えることができると思います。
大切なのは、親が笑顔で育児も仕事も趣味も、自分の人生を楽しんでいること。そこに自然なスマイルがあり、笑顔があればラブが生まれる、家庭がピースになる。僕はそう思っています。子どもは親を映す鏡ですから、親がつまらなそうにしていれば、大人になりたくないと思うかもしれない。親がにこにこ笑って過ごしていれば、自分の未来にも希望を持って生きることができるはずです。

父親が早く帰宅できて、育児をすることが普通になる社会の実現が大事。

 多くの育児アンケートにおいて、どんな子に育ってほしいか?という質問に対する答えの1位は「思いやりのある子ども」ですよね。そのためには、まずは親自身が思いやりを持って他の人に接していくことが基本。その上で、子どもと向き合う時間をつくることが大切なんです。子どもは家庭で自分が大切にされている、愛されているという安心感があれば、人にも思いやりをもって接することができるし、誰かのために生きようと思えてくるはず。
 そういった面からも父親が育児に参加することは子育てに大きな意味があるのです。だからこそ父親が早く帰宅できるワークライフバランスが必要ですし、父親の育児が普通になることが大事だと僕は考えます。

 女性の側も「家事育児は女性の仕事」という古い考えに縛られて、完璧な母や妻を目指してしまう人もいますが、子育ては自分だけで抱え込む必要はないんです。
また母親は、子どもが大きくなるにつれて、よそのお子さんと比較して「うちの子はこれができない!」と比較しがち。そんなときは「ゆっくりでいいよ」と父親の方がフォローして、子どもや母親を追い込まない。そんなことも父親の大切な役割だと思います。

安藤哲也さん プロフィール

1962年東京生まれ。明治大学卒業後、出版社勤務、書店経営、NTTドコモ、楽天での勤務を経て、2007年より父親支援のNPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事に就任。「パパ's絵本プロジェクト」のメンバーとして、全国の図書館・保育園・自治体等にて、パパの出張絵本おはなし会を開催中。内閣府「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム」東京都「次世代育成支援検討委員会」等の委員も務める。著書に『パパの極意―仕事も育児も楽しむ生き方』(NHK出版)『PaPa's絵本33〜パパのためのROCK'N絵本ガイド』(小学館)等。
●ファザーリング・ジャパンHP
http://www.fathering.jp/
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